RECOMMENDATIONS FOR REGULATING THE ACCESS TO MUSICAL INSTRUMENTS IN PUBLIC
COLLECTIONS: 1985
CIMCIM: the International Committee for Musical Instrument Collections of the
International Council of Museums
公開されている楽器収集機関の楽器利用規制に関する勧告
1985年
本勧告は以下の会員により作成された。
- Robert Barclay, Canadian Conservation Institute, Ottawa, Canada
- Florence Gétreau, Musée Instrumental, Paris, France
- Friedemann Hellwig, Germanisches Nationalmuseum, Nuremberg, Federal Republic of Germany
- Dr Cary Karp, SMS-Musikmuseet, Stockholm, Sweden
- Dr Jeannine Lambrechts-Douillez, Museum Vleeshuis, Antwerp, Belgium
- Dr Frances Palmer, Horniman Museum, London, England
本勧告の原案はCIMCIMニュースレター第10号(1982年)で提案され,その後1983年のオックスフォードにおけるCIMCIM総会で討論が行われた。その総会で編集担当班に原案を本勧告の形に改訂する任務が与えられた。本勧告は実施されていく過程で得られる経験に照らして当然更に修正を加えねばならないものである。
公開されている楽器収集機関の楽器利用規制に関するCIMCIM勧告
1. はじめに
- 時間的・地理的に広い範囲に及ぶ楽器が過去20〜30年間に次第に注目をあびてきている。音楽及び楽器の科学を更に深く理解するために,音楽家,楽器製作者,そして学者たちは楽器をもっと良く知ろうと努めているのである。公開収集機関の楽器は,音楽の演奏,そして楽器製作者の製作法と製作技術に刺激を与え,また学問的研究の刺激剤ともなっている。
大半の管理者Curatorは,収集品利用を,私たちの音楽の伝統を理解する上で望ましく,必要であると考えているが,時には利用することによって注目されている楽器そのものが犠性になってしまうこともある。十分管理されずに利用した結果,情報の中には取返せずに失われてしまうものもあるのである。時代や地域は非常に様々であるのに,現存する楽器は限られており,それらは不注意,連続的使用,取扱い方,演奏,計測により更に数少なくなってしまっている。
博物館には機能的に多様な品々が見られる。しかし,それらの物がその第一機能を発揮させるのは,多かれ少なかれ困難であろう。よかれあしかれ楽器というものは,その元来の音を表すような状態で保存することが普通求められているのである。しかし,音の出ない楽器でも,音楽家に音の出る複製品を提供する為に楽器製作者にとっては有用で貴重な情報を与えることが出来るのである。
従って,楽器は音楽上及び音楽以外のいろいろな段階の文化遺産の重要な部分を形作っているのである。楽器を保護し保存するための基準は多様な諸相を考慮に入れねばならない。そうすることで初めて楽器は私たちの音楽史の重要な証拠となり,他の学問研究分野に貢献し続けることが可能となるのである。本勧告が表明されたのはこのような理由による。
博物館あるいは公開収集機関の職務は主に2つある。所蔵楽器の安全保護と保存に対する責任,そしてその楽器の研究を促進しそれによって得られた情報を普及するという目的,の2つである。このように,博物館は現代の楽器製作者,演奏家,学者と,その作品が展示されている人々との間を繋ぐ役割を果たしているのである。
本勧告では通常の方法で展示を見学する人々については,問題にしているとしてもそれは付随的なものにすぎず,「見学者 Visitor」という言葉は,その専門的関心から楽器に更に近づく必要があると認められる学者,演奏家,楽器製作者を意味するのに用いられている。公開収集機関が所有する楽器を直接利用し手で触れるということは,研究に関心をもって十分に適格であると認められた者にのみ差しのべられる例外的なサ一ヴィスとされるべきである。
本勧告は,博物館及び個人が私達の音楽の伝統を再検討する助けとなるように意図されたものであるが,一方,同時に,許容される利用についての基本的な指針を示しており,それは楽器,公衆,博物館の利益を保護することになるであろう。本勧告は楽器専門の収集機関および一般的な収集機関から得られた経験に照らして作成されており,大小各規模の博物館に収蔵されている楽器に等しく適用できるが,それは,本勧告が利用規制に関して納得できる最少限の条件を示しているからである。本勧告によって管理者の責務は何ら解消されないが,勿論,個々の状況に応じて本勧告が説明役を果たすことになるであろう。また,本勧告は利用申請に関連して見学者が読まねばならないものである。
2. 利用の第一条件
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2.1. 博物館員と作業スペースの限界内で,詳細な研究をする為の楽器の利用を認めるあらゆる努力がされねばならない。申請者は,楽器を展示場所から移動させることを含めて,適切な保護管理と専門的な障害について知っていなければならない。これらの作業はすべて通常は勤務時間中に行われる。
2.2. 利用するために訪問する前に,書類申請で予約を行わなければならない。見学者は信用証明書を提出する用意をしていなければならない。申請者は調査の理由,性格,目的,を述べなければならない。
2.3. 楽器の状態により調査が不可能な場合には,利用を断って良い。適当な記録資料が博物館を通して手に入る場合,既に製作されている資料を複製するには,申請者は妥当な理由を必要とする。
2.4. 見学者が作成した覚書き,写真,製図等は当該楽器の記録資科として全て博物館の所有となる。見学者は博物館にこれらの全資料のコピーを提供し,後に同楽器に関心を持つ見学者が自由に利用出来るように博物館がその資料を配置することに同意する書類に署名しなければならない。
2.5. 収集品利用は全て博物館自身の条件のもとで実施される。もし見学者が博物館の規則を無視したという確かな理由があれば,見学は断られるか,又は終結される。
2.6. 調査に用いられる道具や方法は全て無害でなければならない。適当と判断することができない場合,使用許可を与えてはならない。
3. 一般的な損傷防止
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3.1. 博物館所蔵の楽器を安全に取扱うには,楽器製作者や楽器学者,音楽家に必ずしも知られていない技術を必要とする。しかし,見学者はある特定の種類の楽器について,博物館員の誰よりも幅広い知識をもっているべきであり,その結果,自分自身で取扱いの方法について適切な判断を下すことができるのである。見学者の専門知識を考慮して,博物館は,何が安全で許容出来るかを決定する権利のみを保有すべきである。
3.2. 楽器の取扱いには常にいくらかの危険が伴っている。展示場所や保存庫から楽器を移動したり,調査の為に分解したりすることによって,摩耗とか,指の跡のように一見したところ取るに足らない損傷から,木管楽器のほぞを壊すというひどい損傷に至るまであらゆる損傷が生じる可能性がある。この種の損傷は,楽器を清潔な手で取扱う(金属の場合は手袋をして),適度な大きさの当てものをした作業台に置く,等々の一般的な注意をすることで防ぐことができる。しかし,作業には細心の注意を要する場合が多いので,損傷が生じた時の責任問題を回避をする為に,博物館員が実行すべきである。調査が行われる場所は,温度・相対湿度のいずれも保存庫あるいは展示場所と同じでなければならない。
3.3. 見学者は楽器に痕跡を残してはならず,粘着性物質もつけてはならない。拓本をとったり透写したりすることは,博物館員の直接の監督下でのみ,また適当な写真が撮影できない場合にのみ許可されるべきである。
3.4. 博物館から特に依頼された場合でなければ,見学者は分析を目的として楽器の素材から標本をとることは認められない。
4. 計測具及び計測方法
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4.1. 最近の測定技術は楽器を計測する際に生じる諸問題を全く支障なく処理することができるが(光学式レーザー写真,音響ホログラフィー,写真測量,レントゲン写真),一博物館の立場でそのような直接接触する必要のない技術を利用できるのは非常に稀であろう。博物館見学者が使用すると思われる計測具は,その計測具と楽器との間に機械による接触が入らざるを得ないものである。絶対に安全な計測方法はない。
提案される全ての方法について適当かどうか判断するにはかなりの経験を必要とし,簡潔な指針を示すことはできない。明らかに危険であろうと思われる方法ー例えば,道具が傷つきやすい表面をひっかく恐れがあるとか,楽器を壊してしまうような力を使用することーは,認められるべきではない。作業する者の技量も,計測具の妥当性と同様に慎重に考慮されねばならない。
4.2. 完璧に正確な計測具はない。従って測定値は求められるべき(「真の」)値の近似値になろう。カリパス,マイクロメーター,そしてそれに類する計測具は計測される物としっかり接触している場合にのみ正確である。計測具の接触面が柔らかければ柔らかいほど損傷は少なくなるが,残念ながら,非常に正確な読取りはますますできなくなるだろう。安全性と正確さとの間で妥協しなければならない。このような理由から,金属性の計測具の使用を禁止するのが博物館の通例となっているが,だからといって,全ての非金属性の計測具が安全であると考えてはならない。博物館自身が少なくとも基本的な計測具を用意する方がよい。
4.3. 標準規格の計測具を変える必要があるかもしれない。例えば,スティ一ル製のカリパスには傷のつかないプラスティック製のおおいを先端につけるか,又は,全部プラスティック製の物に取替えねばならない。スティ一ル製の引き込み式巻尺の代わりに,仕立て用の麻かプラステイク製のものが良い。(巻尺は定期的にスティ一ル製の定規で正確かどうか点検できる)。型をとる為に,柔らかい製図用雲形定規や機械的な器具を使用してはならない。複雑な曲線を描くには,切抜きの厚紙製テンプレートの方がずっと安全で正確な方法である。
4.4.数種の主要な楽器に関する特別の条件
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4.4.1. 管楽器
木管楽器の適切な測定記述には外形,内形,指孔の配置の計測が含まれる。金管楽器の場合もそれと同様であるが,内形よりむしろ管壁の厚みの方を計測すべきであり,ヴァルヴ機構も解説を要するものである。木管楽器の外形は紙に写しとることが可能であり,プラスティック製のカリパスによる計測でその補足をすればよい。
木管楽器の内形を計測する道具は基本的に2種類ある。一方では,楽器にその道具を差込むのに先立って,道具と計測される管の表面とのあいだに隔たりを置かねばならない。他方では,道具の先端にばねがはめこまれて柔軟になっている。後者の方が簡単に,また早く使えるが,管内部の表面と常に接触することになるために,線状の跡を残すという非常に不利な点もある。この様な理由により,市販のダイアル表示付内形計測器は使用するべきではない。目的に適うように作られた道具は許容出来るかぎり弱いばねでなければならない。道具とその使用者との間の触覚上のフィードバックの度合いが大きければ大きいほど,先端が固定されている計測器はより敏感に使いこなすことが可能となる。熟練者の手になれば,その様な道具でも非常に正確な結果を得ることができる。
可能な場所ならば,金管楽器の管の厚みはカリパスで計測できるが,もしできなければ,超音波測定器に頼る以外に方法はない。
木管楽器の外面にある指孔の配置に関するデータは普通容易に得られるが,管の内側の指孔の配置は,指孔自体の形状と同様に計測がかなり難しい。その情報は重要であるのにもかかわらず,最も詳細な測定表にさえも普通含まれていない。
金管楽器のヴァルヴ機構は通常の機械技術で計測することができる。
4.4.2. 鍵盤楽器
鍵盤楽器の計測は,容易に計測できる最少の範囲に絶対に制限すべきである。この作業には何ら特殊な道具を使用してはならず,従って3.に十分留意して実施されねばならない。
4.4.3. 弓奏及び撥奏弦楽器
響板の厚みを測るための目盛り付ゲージ,マイクロメ一夕一,カリパスは,木管楽器の計測のための道具と類似したものを用い,注意深く扱わねばならない。計測器は移動させる場合は引きずってはならず,必ず離してから新しい場所へ移すべきである。響孔,ローズ,その他の壊れやすい部分の周辺には多大の注意が必要とされる。弦及び弓の弦は監督されている場合でなければゆるめてはならず,結びつけられているフレツトは,調節してはならない。
5. 演奏
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5.1. 一般的な留意点
取扱い方法及び計測と同様の一般的な原則が,演奏にもあてはまる。
公開収集機関の楽器は,目的のない好奇心や個人的な楽しみといった動機によって演奏することを許されるべきではない。また練習用の楽器と考えてもならない。博物館の楽器はすべて,使用すれば機構上の損傷を受ける危険性があるということは明白である。弦楽器を調弦すること,あるいは管楽器に湿った空気を送り込むことによって生じる緊張は,事前に予測できないし,その楽器が耐えられる範囲をたやすく超えてしまうかもしれないのである。弦楽器を実際の音高にまで上げて調弦することを控え,起こり得る危険な状態を回避することは簡単なことである。管楽器を吹奏することによって生じる損傷に対しては,同種の防止策はない。演奏することで明らかにこの種の危険がおこる可能性があると判断される場合は,その全過程を良質の録音によって記録しておくのが賢明である。この種の記録資料は非常に価値があり,ある楽器の音に関する情報が将来求められたときに充分使えるであろう。
楽器が陳列又は保管されている時には,弦や太鼓の膜面のような部分はゆるめられた状態にあることを見学者は承知していなければならない。
楽器は監督されている状態で演奏されるべきであり,演奏者はどんな種類の調節をもすることは許されない。
5.2. 数種の主要な楽器の音質を調査する際の留意事項
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5.2.1. 管楽器
管楽器に湿った息を吹込むことで,容積に変化が生じ木あるいは象牙が割れたり,金属に腐蝕が始まる可能性はある。演奏する前に,楽器を体温程度まで暖めておかねばならない。演奏時間は制限し,水滴が管の先端にたまるのが目に見えるほど長く許されるべきでない。金属製の管の先端部に水分がたまったら,暖かい空気の風を送つて除去しなければならない。木管楽器の場合には吸湿性の道具が乾燥用として用いられるが,その道具が管の先端部の表面をすりへらすのも事実であるので,長く使用することは許されるべきではない。乾燥作業は熟練を要する作業であり,博物館員によって実行されるか,あるいはその監督下で行われるべきものと考えねばならない。
5.2.2. 鍵盤楽器
弦を調律するのは博物館員のみが行なうべきである。楽器が演奏される時には,爪,ハンマーの皮のおおい等々のオリジナルの部品が摩耗するということを考慮に入れなければならない。
5.2.3. 撥奏及び弓奏弦楽器
楽器は間違った弦を張られたり,高すぎる音高に調弦されると壊れる可能性がある。
壊れやすいと考えられる楽器の場合,弦を演奏時の張力にする時間は厳しく制限されねばならない。
演奏者は,楽器が衣服とこすれたり,剥きだしの皮膚と不必要に接触するのを防ぐために,皮片を使用すべきである。顎当てのような演奏補助具は,それが歴史的に正しい場合にのみ用いられるべきであり,博物館員自身によって,又はその監督下でつけられるべきである。
6. 補足事項
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6.1. 情報の普及
博物館所蔵品に関する情報の普及を促進するのが博物館管理者の責務である。博物館所蔵の楽器についての特別の情報が多く利用できればできるほど,楽器そのものを利用したいという要求は少なくなるだろう。
博物館見学者によって製作された資科の使用権に関する取決めはすべて,著作権の見地から,またその博物館が所属する国家の他の法律に照らして検討すべきである。特に,著作権法は多岐にわたっており,一般的な指針を示すことはできない。特定の取決めが成されていない場合,博物館は,その管理下にある記録資料について,著作権上の防護策を何ら持っていないことになる。協定書の見本を本勧告に添付したので,適宜都合の良いように変更し,見学に先立ってそれに署名をするべきである。
見学者が写真をその機会をとらえて撮るのを認めるよりは,博物館が写真提供の事業活動をする方が一般的には好ましい。そうすることによって,写真資料の著作権の問題は避けられるのである。
図面複製という商業的な面から見て,図面が製作される前に,博物館と見学者との間で必ず協定を作成しておくことが重要である。もし博物館が図面に対する全権を保有したいと希望するならば,図面製作者との間で適当な金銭的合意を作らねばならない。
6.2. 楽器の複製
博物館は,その所蔵楽器の複製に,設計上の妥協の程度に応じて正直に表示することを要求しなければならない。「正確な複製」は絶対にありえない。「・・・に基づいて」,「・・・に倣って製作」というような表現が好ましい。原製作者の印章や商標を複製品に使用することは断じて拒否するべきである。博物館は特定の使用法を強要することはできないが,個々の楽器製作者が,その製作品に商標を貼る事について倫理的な制度に従う気になれば,それはすべての人々にとって有益であろう。
6.3. 演奏のための使用
ある楽器を演奏するために使用する場合,できる限り広範囲の人々が聴けるように計画されねばならない。従って,演奏会のみよりも録音及び放送のほうがよりよいと思われる。どのような方法になったとしても,楽器に対する責任を博物館は演奏の準備をする人々に譲ってはならない。
このような事から,使用不能の楽器より修復されている楽器の方が機構上の損傷を受けやすい。その様な修復楽器はまた気候条件や機械的な圧力に敏感であり,他の博物館所蔵品と同様に注意して取扱わねばならない。別室へ楽器を移動させる時には湿度の急激な変化に楽器をさらすことを避けるべきであり,また,舞台上の照明による熱の影響も問題を起こす原因となるので,慎重に処置しなければならない。
協定文書見本
○○博物館
私は『公開されている楽器収集機関の楽器利用規制に関するCIMCIM勧告』を読み,その勧告に示された規則および下記事項双方に従うことを承諾いたします。
記
-
1. 覚書き,図面,写真等はすべて個人的に使用する。
2. 全資料の写しを博物館に提出し,それは当該楽器の記録資料に加えられて他の資料と同様に利用されるが,作成者の名は明示する。
3. 計測具や調査方法についてはすべて博物館員の承認を得るものとする。
4. その他
5. 本協定書に違反した場合,例えば記録資科を許可を得ず商業的に使用した場合,以後その収集機 関を直接利用することは拒否されることがある。
年 月 日
楽器登録番号
住所
氏名(署名)
─────────────────────────────────────
博物館側記入箇所
全資料の写しの受取 年 月 日
担当者名
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